第二十六戦…長篠の戦い・其の八

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「……今さらそんなこと言われても……もう遅いさ」 弥七は俯いて忠勝から目を背け、地面に視線を落とした。いつ斬られてもおかしくない状況にも関わらず、弥七は顔を上げようとしなかった。 「俺が未熟なのは自分自身が一番よく知っている。不意打ちをしてもお前に傷を付けられなかったんだからな」 刀を強く握り締める手が震える。ここまで力の差を見せ付けられては何の為に実戦を積んできたかわからない――。 「だが……本多忠勝。あんたを討たない限り……」 ――手の震えが止まった。 弥七は再び刀の切っ先を忠勝の首もとに向ける。 「俺は終われない」 そう言うが早いが、弥七は刀を両手に握って忠勝に突進していった。走る度に頭の笠が空気を浴び、進む事を拒むかのように弥七を引っ張る。 だが、弥七は止まらない。 「俺はもう戻れない!!お前を倒して……先に進むしかないんだ!!」 弥七は走りながら飛び上がり、忠勝の兜に向けて刀を振り下ろした――。
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