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その瞬間だった。
忠勝の槍の先に何かがぶつかり、軌道が変わった。そして槍は弥七の胸のすぐ隣――地面に突き刺さる。
「何っ!?」
まさか自分の狙いが外れるとは。忠勝はそんな思いに支払いされていたに違いない。
「何が起こった……!」
弥七を無視して辺りを見渡す忠勝。
「……そこからどけっ!!」
忠勝の隙をつき、弥七は仰向けのまま足の裏で忠勝のみぞを蹴飛ばす。
「ぐっ……! しまった……!」
忠勝はみぞおちを手で押さえ、ようやく弥七の方に向き直った。
「……また助けられた」
忠勝は何が起こったのか理解していない様子だったが、弥七は既に把握していた。
「忠勝、この勝負はお前の勝ちだ。……だがまだ俺は死んではいない。俺は生きている限り、お前の首を狙い続ける」
弥七はにやりと顔を歪める。
まだ機会はある。次に会ったその時は自分が勝つ番だと自らを奮い立たせた。
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