第二十六戦…長篠の戦い・其の八

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その瞬間だった。 忠勝の槍の先に何かがぶつかり、軌道が変わった。そして槍は弥七の胸のすぐ隣――地面に突き刺さる。 「何っ!?」 まさか自分の狙いが外れるとは。忠勝はそんな思いに支払いされていたに違いない。 「何が起こった……!」 弥七を無視して辺りを見渡す忠勝。 「……そこからどけっ!!」 忠勝の隙をつき、弥七は仰向けのまま足の裏で忠勝のみぞを蹴飛ばす。 「ぐっ……! しまった……!」 忠勝はみぞおちを手で押さえ、ようやく弥七の方に向き直った。 「……また助けられた」 忠勝は何が起こったのか理解していない様子だったが、弥七は既に把握していた。 「忠勝、この勝負はお前の勝ちだ。……だがまだ俺は死んではいない。俺は生きている限り、お前の首を狙い続ける」 弥七はにやりと顔を歪める。 まだ機会はある。次に会ったその時は自分が勝つ番だと自らを奮い立たせた。
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