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「……撤退!? どういう意味だ?」
「鳶ヶ巣山砦が陥落した。……長篠城が敵の手に落ちたんだ」
「……それって……!」
千代は言葉を失った。本来、この合戦は長篠城を奪う為に起こったのだ。その為の砦が陥落してしまっては意味がない。
「……更に悪いことに、敵が総攻撃を仕掛けて来ている」
「総攻撃だと!? ……本気で潰しにかかって来たか……!!」
弥七は正好の情報を理解出来そうになかった。あの勝頼が全軍撤退を命じるとは――。
そうして弥七がしばらく黙り込んでいると、千代が何かを思い出したように顔を上げた。
「……殿軍……殿軍はどうなったんです!?」
正好に詰め寄る千代。その答えを正好は知っていたが、話したくなかった。
「昌豊殿と信房殿……この二人が殿軍を買って出た」
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