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「今だ千代!! 俺に付いて来い!!」
弥七の走る先に敵は居ない。彼は後ろを振り返り、千代を一瞥して伏兵の中を走り抜ける。
(……私も行かなければ……!!)
自分だけではない。仲間が居る。仲間の切り開いてくれた道が目の前にあるのだ。
「あの雑兵は無視だ!! この女の武将をひっ捕らえろ!!」
(……まずい!)
敵兵は狙いを千代に定めた。分散されていた兵力が一気に千代に集中する。
(いや、まずくなんてない……示された道を進まなければ!!)
千代は走りながら弓矢に手をかけて弦を引く。弓がしなり、発射される矢。
「ぐおっ!!」
千代の発した矢は的確に敵兵の額を貫く。
(壁が薄くなっている――今しかない!!)
倒れた兵に変わって千代の前進を妨害しようとする敵兵。弥七の時には三人ほどいたが、今は一人しか壁になっていない。
「あなたがたに恨みはありませんが……失礼します!」
再びしなる弓。発射された矢は真っ直ぐと敵兵の眉間に突き刺さった。
(……ここしかない!)
眼前の敵兵が倒れたのを確認した千代は伏兵の波から逃れようと、走る速度を速めた。
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