第二十六戦…長篠の戦い・其の八

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「今だ千代!! 俺に付いて来い!!」 弥七の走る先に敵は居ない。彼は後ろを振り返り、千代を一瞥して伏兵の中を走り抜ける。 (……私も行かなければ……!!) 自分だけではない。仲間が居る。仲間の切り開いてくれた道が目の前にあるのだ。 「あの雑兵は無視だ!! この女の武将をひっ捕らえろ!!」 (……まずい!) 敵兵は狙いを千代に定めた。分散されていた兵力が一気に千代に集中する。 (いや、まずくなんてない……示された道を進まなければ!!) 千代は走りながら弓矢に手をかけて弦を引く。弓がしなり、発射される矢。 「ぐおっ!!」 千代の発した矢は的確に敵兵の額を貫く。 (壁が薄くなっている――今しかない!!) 倒れた兵に変わって千代の前進を妨害しようとする敵兵。弥七の時には三人ほどいたが、今は一人しか壁になっていない。 「あなたがたに恨みはありませんが……失礼します!」 再びしなる弓。発射された矢は真っ直ぐと敵兵の眉間に突き刺さった。 (……ここしかない!) 眼前の敵兵が倒れたのを確認した千代は伏兵の波から逃れようと、走る速度を速めた。
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