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「今日はもう遅い。敵に襲撃される可能性もあるが、ここで一泊した方がいい」
そう言って弥七は立ち上がり、「俺が見張りをする」と続けた。
空は真っ赤な夕焼けから少しずつ漆黒の闇へと変貌している。
「ありがたい申し出だが……一番疲れてるのはお前だろう」
正好は立って弥七のそばへ行き、軽く肩を叩いた。
「俺に任せておけ。一日くらい眠らなくても平気だからよ」
正好は顔に笑みを浮かべる。それが本当の笑みなのか強がりなのかは弥七と千代にとっては定かではない。
「一人では危険ですよ正好。私も見張ります」
背負っている弓の弦を触りながら千代が言う。しかし正好は千代が立ち上がろうとしたところで「いや」と手のひらを突き出して動きを止めた。
「お前は足を怪我してるだろう? 下手に動かすと治りが遅くなるからな」
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