第一戦…英雄への憧れ

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落ち葉を踏みしめる音を聞きながら歩いていると前方に屋敷が見えた。かなり大きな屋敷だ。……何か人影が見えるが……。 「ん?兵士の希望者か」 こちらの姿をみるなりいきなり話しかけてきた。この男は門番のようなことでもしているのだろうか。 とりあえずは無言で無言で頷いておく。 「わかった。その前に刀を預かろう」 刀身が落ちないように門番の男に渡す。すると門番の男はその慎重さを無視するかのように「普通に」持った。 少しだけ思うところがあったが何も言わないでいるとその門番らしき男に案内され、屋敷の屋内の広場に行き着いた。 彼が思ったよりも人が少ない。多く見積もっても百二十人ほどだろうか。 列になっているようなので列に従って並ぶ。作法というものだ。 「お前も兵士志願者か?」 隣の図体の大きな男が話し掛けてきた。どうやら今日はいきなり話し掛けられることが多い日らしい。 「まあな」 「名前は何だ?」 「名前? ……あぁ、名前な。俺は新田弥七(にったやしち)だ」 「弥七な。俺は金森正好(かなもりまさよし)ってんだ。ま、仲良くやろうぜ」 正好は厳つい顔で笑ってみせる。 「は? 金森……?」 「おい、お前らいいか」 弥七の言葉を遮って誰かの声がした。いつの間にかいつか見た男が兵士志願者の前に立っている。 一応自分より先を行く者だ。信玄からこういう役を任せられるくらいだからそこそこ偉いんだろうがそれでも下っ端だろう。 「武田軍の兵士に求められるのは……」 そこで言葉を止めた。 「疾きこと風の如く。徐かなること林の如く。侵し掠めること火の如く。動かざること山の如しだ」 男の説明に兵士がざわつく。 弥七も意味が良くわからない。 「簡単に言っちまうと今のは戦の兵法だ。風の如く速く林の如く静かに、火の如く激しく山の如く揺るぎなく攻めろということだ」 弥七は息をついた。 それなら最初にそう言えばいい。 しかもよく見るとこの男は先程の門番だ。手には弥七の刀を持っている。どこかしらに置けばいいものを。 「いまいちわからん説明だな」 正好の言う通りだ。 「よし、今からお前たちは正式な武田軍の兵士だ。雑兵からだが頑張れよ」 それだけ言って男は広場を出た。 「随分簡単なご挨拶だったな」
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