第一夜

5/8
前へ
/41ページ
次へ
一週間前の話 娘を連れて、ドライブに行った なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って で、娘を脅かそうと思って舗装されていない脇道に入り込んだ 娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ そしたら、急にエンジンが停まってしまった 山奥だからケータイも繋がらないし、車の知識もないから娘と途方に暮れてしまった 飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか・・・ で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝、歩いてドライブインに行くことにしたんだ 車内で寒さをしのいでいるうち、夜になった 夜の山って何も音がしないのな たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで で、どんどん時間が過ぎてって、 娘は助手席で寝てしまった 俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた 今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで 「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」 って何度も繰り返してるんだ 最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてた だけど、音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ そしたら、白いのっぺりした何か が、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいてくるのが見えた 用は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、顔がないシルエットで足は一本に見えた そいつが、例えるなら 「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに振り回して身体全体をぶれさせながら」 向かってくる めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは 「隣で寝てる娘が起きないように」 って変なとこにきが回って、叫ぶことも逃げることもできないでいた そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車を通り過ぎていくようだった 通り過ぎる間も 「テン…ソウ…メツ…」 って音がずっと聞こえていた
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加