一章 1

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件の洞窟に着き、探索すること約数時間。 最深部と思わしき場所で、竜と対面する。 “ヤツ”の全長は約20m前後。翼は無く、四足で長い尾を持つ、蜥蜴のような姿をした、予想通り中位種に分類されるであろう竜だった。 予想通りだったのはそれだけ。 そこで、俺達は、認識を改める必要があった。 “勝てない” 1%もない、と思われていた勝率は、その実、0%だった。 討伐に成功したっていう三件は全部デマだと確信した。 俺達は常に最悪の想定をする。 並のA級ブレイカーなら絶望的、と言える状況を想定し、そこから0,1%以上の勝率を作ってから挑むのだ。 故に一流は“絶望”しない。 一流は自分に出来る事、出来ない事を把握しているから、“望みが絶たれる”状況ってのは即ち死ぬとき。 だから確実に0,1%でも勝率を作ってから挑む。 今までそうやって生き残ってきた。 『運良く』でも『危ういながら』でもない。 どんなに勝率が少なくても、確実にそれをものにしてきたのだ。 しかし…… その“最悪の想定”ってやつがどれ程のぬるま湯だったかを思い知る。 “ヤツ”と向かい合った瞬間に感じたものは、確かな“絶望”だった。 逃げることも叶わない。 つまり、俺達はここで間違いなく死ぬ。 奇跡でも起きない限り。 “奇跡は起きないから奇跡。故に期待するな” 全員がそれを胸に刻み付けながら、今まで生き残ってきた筈だった。 しかし、今は全員が奇跡を願うしかなかった。 0%の勝率を0,1%に……否、小数点以下がどれだけ多くても構わない。 ほんの僅かでも、勝率が生まれるなら…… そんな奇跡を手に入れるため…… ……俺達は“悪足掻き”を開始した。
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