一章 1

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身体が壊滅的なのは相変わらず。 放っておけば、間違いなく死ぬレベルの状態。 それに『幻想の武具』を手に入れたところで、俺自身が強くなった訳じゃない。 “絶望”は抜け出せたものの、状況は最悪。 たが、 “絶望”じゃないなら充分。 僅かでも勝機があるなら、それを手繰り寄せられる。 覚悟を決め、グラムに魔力を流し込む。 その瞬間、 「!?!!?!???!!!!?!」 パニックに陥った。 襲い掛かってきたファーブニルは、防御した時と同じ様に身体が勝手に動いて、何とか避けることが出来た。 と、 この時点でおかしい。 さっきまでの俺はファーブニルの攻撃に対し、防御が精一杯だった。 にも関わらず、この身体は先程とは違い、無理矢理動かしている状態だってのに、攻撃を跳んでかわし、そのまま20mあるファーブニルの体を飛び越えてしまった。 パニック状態から少し落ち着いた頭で冷静に考える。 『幻想の武具』には、模造品なんかとは比べ物にならないくらいの魔力増幅回路が組み込まれている。 ってのは知っていたが、これ程のもんだとは思わなかった。 いつもの感覚で魔力を流し込んだら、ウン千倍くらいに増幅され、溢れだした魔力はそのまま自分自身に帰ってきて、自身の魔力をウン千倍にまで引き上げた。 つまり、これは永久機関になっている。 流し込んだ魔力は桁違いに増幅され、そのまま自分に帰ってきて、そこからまた魔力を流し込める。 ってことは“魔力を剣に流し込んでいる限り、魔力切れを起こすことがない”という無茶苦茶っぷり。 さらにその桁違いの魔力量の恩恵を一番に受けるのがこの身体だ。 身体強化の為に帯びてた魔力がウン千倍に上がるもんだから、身体能力は最早、人の域を軽々と超えてしまった。 “剣が強いだけで俺は強くなってない”と思っていたが、とんでもない。 このじゃじゃ馬は、持ち主を無理矢理自分を扱うに相応しい状態にしてしまうのだ。 確かに扱いにくい剣ではあるが、これだけのアドバンテージがあるなら、なんとかなる。 頭を整理し、20mの立ち幅跳びという“超躍”からの着地と同時に振り返り、四度、ファーブニルと対峙する。
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