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英雄ってのは偉大な功績を残した人間に与えられる称号。
……じゃないのか?
“ヤツ”が言っている『英雄』というものと、俺のよく知っている英雄ってのは、恐らく意味が違う。
そしてその違いも含め、“ヤツ”が何を言っているか理解できなかった。
ファーブニルは“自らが倒されること”ではなく、“その結果、その人間が『英雄』になること”がマズイと言っている。
どういうことだ?
「おい、」
「ここまでだ、人間。この借りは完全に再生してから返させてもらう」
そう言うと“ヤツ”は、俺に質問の機会さえ与えず、先程まで無かった筈の翼を広げ、洞窟の天井を突き破り、飛び去って行った。
「………」
疑問と疲労に、頭と身体を蝕まれていた俺は、ただ呆然と飛び去って行くファーブニルを見ていることしか出来なかった。
飛び去って行くファーブニルは近隣の村でも目撃され、パーティーを多く失いながらも、俺は『竜を撃退した』と言うことで、一応依頼は成功したってことになっていた。
しかも『幻想の武具』を手に入れた三人目の人間ってことで、ギルド協会本部に呼び出され、研究の為、あれこれやらされることになった。
その見つけた『幻想の武具』はというと、これがまた不思議なことに、戦闘が終わると消えてしまってた。
っても、完全に消えた訳じゃなく、必要な時にいつでもこの手に喚び出せるようになってた。
協会の研究者曰く、普段は持ち主の魔力と融け合ってるんじゃないか、とのこと。
なんにせよ、鞘に入れて持ち歩かなくていいのは非常に便利である。
なにより、魔力と融け合っているから、戦闘中に何かあって手離しても、すぐに霧散してまた俺の手元に戻ってくるのだ。
流石は『幻想の武具』。
と、
そこでふと気になったのは、他の『幻想の武具』を持つ二人のことだった。
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