一章 1

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最初の一人は、今どこで何をやっているかも不明らしいが、もう一人の方は、なにやら一つのギルドに止まらず、世界中をフラフラと回っては、たまに近くのギルドに立ち寄って依頼をこなし、またフラフラと放浪する。 という風来坊らしい。 しかも、どうやらかなりの人格破綻者、との噂。 所持してる『幻想の武具』は、本人曰く、『レーヴァンテイン』で、その威力は「周囲半径1kmくらいを火の海に出来る」とのこと。 この物騒な発言からも、その破綻した性格の一端が見え隠れしている。 「ってオイ!」 「はい?」 突然の突っ込みに、訳も解らず、研究者は不思議そうな顔を俺に向けていた。 「『レーヴァンテイン』っつったら『神器(アーティファクト)』じゃねぇか!」 『幻想の武具』と言っても、その内容は様々で、『幻想種』でも、『魔獣種』や『竜種』と言うような種別分けがあるように、『幻想の武具』も色々な種類に別れている。 例えば、俺の持つ『グラム』は『名剣』と呼ばれるもので、多少、神性を帯びてはいるものの、あくまで“人の世の武器”なのだ。 これに対して『レーヴァンテイン』は『神器(アーティファクト)』と呼ばれるもので、本来は儀式用等に創られたものではあるが、創ったのが神々だって言うから、その神性は『聖剣』以上で、武器としての威力だって引けをとるもんじゃない。 つまりは武器としての性能……あとついでにレアリティ……で、完全に俺の『グラム』を上回っているということだ。 ……勿論、競うところではないんだが。 俺は、この『レーヴァンテイン』の所持者にコンタクトを取るべく、うちのギルドの近くに立ち寄った際には、うちに連絡を入れてもらえるように手配してもらうことにした。 此度の戦いで、俺は、色々と考えなければならなくなった。 自身の今後、世界の今後。 ファーブニルが言っていた『英雄』のこと。 他にも色々だ。 『幻想の武具』なんてもんを、見つけちまった責任ってやつだ。 他の人間より優れた力を手に入れた以上、それをどう使うかを決めなくてはならない。 俺は溜め息混じりに覚悟を決めた。 ……これが俺の、約一年半前の出来事だ。
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