一章 2

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「ただいま、『マスター』」 「あぁ、レオンか。おかえり」 倒壊寸前のボロビルを地下に降りると、そこが俺の所属する『ギルド』、『ナイツオブラウンド』になっている。 『円卓の十二騎士(ナイツオブラウンド)』、とはいっても、ギルドメンバーが十二人しかいない訳ではない。 全員は把握してないけど五十人くらいだっけな? 階段を下るとすぐ左手にバーカウンター、正面奥に巨大な掲示板、右手の方にテーブル席が幾つか置いてあり、メンバー全員集まってもまだ余裕がありそうなくらいの広さがある。 つか、明らかに上のビルの間取りより広く作ってあるが、気にしてはいけない。 俺が声を掛けた、カウンター内でグラスを拭いている初老の男性が『マスター』である。 よく勘違いされがちだか、決して『酒場のマスター』ではない。 彼こそが、この、『ナイツオブラウンド』の『ギルドマスター』、『マスターゲオルグ』である。 今でこそ好好爺然としているが、数年前までは現役の凄腕のブレイカーとして第一線で活躍していた。 少なくとも、『グラム』無しの俺の倍以上は強い。 俺がどうやっても敵わないと思える数少ない人間の一人である。 「首尾はどうだった?」 「あぁ、ダメダメ。あの森、『吸血鬼』が居やがる。討伐するなら、わりと強力な結界張ってやがるから、強めの術士連れてかねぇと」 カウンターのいつもの席に座りながら、今行ってきたばかりの依頼の報告をする。 ちなみに行ってきたのは、“未開拓地区の調査”。 『大破壊』の影響で、世界中のあらゆる場所が危険地帯と化してしまった現在、人が暮らせる場所ってのは限られてくる。 俺達はそんな、『大破壊』以降、人が寄り付かなくなっちまった場所に赴き、危険か否か、危険なら、どんな幻想種がそこを縄張りにしているか、っていうのを調べてくる、ってのも、重要な依頼としてこなしている。 “討伐依頼こそが花形”みたいに思ってる奴も多いが、これはこれでどんな危険が待ってるか分からないって場所に、大体一人で行くハメになるから、かなり大変な依頼になっている。 いきなり『竜上位種』なんかとご対面しちまった日にゃ、俺だって多分、生きては帰れない。 まぁ、見つかる前に逃げるけど。
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