序章

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異変の始まりは妖精(ピクシー)の発見だった。 その数ヵ月後には一角獣(ユニコーン)や天馬(ペガサス)が相次いで発見された。 今まで『伝説』や『神話』、『ファンタジー』と云ったものの中だけの存在だった其れ等が『現実』に現れ出したのだ。 人々はこの発見に驚く者もいれば、歓喜する者、好奇の目を向ける者と様々な反応を示しながらも、その愛くるしい姿に確かに平和を感じていた。 その瞬間までは…… “ソレ”は突如として現れた。 まるで初めから其処に居たかの様に。 “ソレ”は凄まじい巨体だった。 にも関わらず“ソレ”が『何処から』、『どうやって』現れたか見た者は一人として居なかった。 “ソレ”は何をするでも無く、歩き出した。 しかし、其の巨躯故に、一歩踏み下ろす度に地は割れ、大きな地震や津波を引き起こし、一声哭くだけで大気を揺るがし、ハリケーンが発生した。 衛星写真に撮られた“ソレ”は、世界地図の様な低倍率だったにも関わらず、細部迄はっきりと写る程に巨大だった。 其の写真から推定された全長は約『7000km』 此の惑星の半径をも上回るそのサイズは『生物』としては存在し得ないものである。 故に『幻想種』 伝説や神話から抜け出したものなら“ソレ”にも名がある筈である。 “ソレ”の名は出現の瞬間から多くの人に知られていた。 世界最大の宗教組織の神話に登場する最悪の怪物。 故に世界の多くの人々は誰が口にするでも無く、“ソレ”の存在を知っていた。 遥か彼方からでも目認できる“ソレ”の体は、漆黒色で、四本の足と一本の長い尾を持ち、爬虫類の様な鱗に覆われていた。 其処から伸びる首は蛇の様に長く、七本に別れ、『七つの頭』を持ち、その内の三つに二本、残りの四つに一本ずつ、計『十本の角』、各々の頭に黄金に輝く『冠』のようなトサカを生やし、漆黒の体色と対照的な真紅の眼を輝かせていた。 “ソレ”の名は『黙示録の赤き竜(グレードレッドドラゴン)』 “絶対”である筈の主に、唯一『敵“対”する者』 通称 『悪魔王サタン』
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