序章

4/4
前へ
/419ページ
次へ
七日間。 七日七晩に渡り、“ソレ”は歩き続けた。 七日七晩に渡り、世界を破壊し尽くした。 そして七日七晩の後、“ソレ”は忽然と姿を消した。 現れた時と同じ様に、『何処へ』、『どうやって』消えたのかを見た者は一人として居なかった。 其の様はまるで、初めから何も無かったかの様だった。 しかし、本当にそうだったらどれ程良かっただろうと多くの人々は嘆いた。 “ソレ”が残していった破壊の爪痕……否、文字通り『足跡』はあまりにも大き過ぎた。 地上における文明の全ては修復不可能な迄に壊滅し、 繁栄を極めていた人類は、其の総人口の実に九割以上にも及ぶ命を、一切の情け容赦無く、無慈悲に、そして無意味に奪われていた。 しかし、其れで終わりでは無かった。 “ソレ”の消失とほぼ同時に、多くの幻想種の存在が確認される。 そして、其の殆んどが魔獣や妖と云った人の命を糧とする怪物ばかりであった。 其れ等の強力さは悪魔王程では無いにしろ、虎や獅子等とは比になるものでは無い。 敵対者は主に対抗するかの様に、奇しくも、主が世界を創造したのと同じ日数を用いて世界を終わらせていたのだった。 そして、残された僅かな人々は手を取り合い、其れ等の強力な怪物達と対抗する手段を模索して行く事となった。 今から約二十数年前の出来事である。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加