一章 1

5/13
前へ
/419ページ
次へ
さらに武器と呼ばれるものも、それまでの『近代兵器』って呼ばれてた飛び道具は一切使用されず、剣などの近接武器ばかりになる。 魔力を込めなきゃ『幻想種』には効果がない、ってのはさっき言った通りだ。 この『魔力を込める』ってのがなかなか曲者で、魔力は術士みたいに『変質』させる以外の方法で放出すると、直ぐに霧散してしまう。 つまり“銃弾や矢に魔力を込めて”撃ち出しても、的に当たる前に魔力が消えちまう。 だから、離れて戦いたければ、術士になるしかない。 まぁ、『魔力そのものを固形に変質』させて『銃で撃ち込む』っていう離れ業をやる奴もいるらしいが、誰でも出来ることではないらしい。 今回のパーティーの中に『幻想の武具』持ちは、勿論いない。 と言うより、世界に二人しかいない人間が、都合良くここに現れるなんて奇跡は起こらない。 一流の条件ってヤツは、『奇跡に頼らない』、『驕りも謙遜もせず、自分に出来る事、出来ない事を冷静に見分けられる』。 この二つである。 討伐に向かう前夜祭でパーティーの誰かが言っていた。 「俺達なら竜種だろうが必ず倒せる!」 勿論、言った本人も含め、そんな簡単な事ではないことを知っている。 むしろ、勝率なんて1%もないだろう。 だからこそ、このパーティーは強いと感じた。 そんな最悪な状況を冷静に受け入れれる。 しかし、勝てないとは誰一人として思ってない。 自分達に出来る事を確実にこなし、1%の勝率にこぎ着けれる、一流の集まりだったからだ。 術士が三人、剣士が俺を含め七人。 しかもその全てが単独で『吸血鬼』を討伐し得る一流ばかり。 各々が最も使い慣れた強力な武器を持ち、一切の妥協を無くし、 俺達は竜種討伐に挑んだ。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加