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ある晴れた日の事。
京の街を二人の男が気だるそうに歩いていた。
「あっちぃー…何で京の夏こんなに暑いんだよ!」
「その声も暑苦しいので黙って下さい」
「てめっ」
団子片手に歩く二人の男は、最近京にやってきた壬生浪士組の土方歳三と沖田総司である。
二人は新しく隊士を募集するために広告を配り歩いていたが、それをすっぽかして甘味屋でダラダラしていた。
今はその帰り道である。
土方は暑さで気がたっているうえ、沖田の態度に苛立ちを感じ我を忘れて殴りかかった。
「テメェ総司!覚悟「すいません」ああ?!」
だが、それは第三者によって阻止されてしまう。
土方が物凄い形相で振り返ると、傘を深くかぶった細身の青年がいた。
「…落としましたよ」
「ん?あぁ、すまねぇ」
青年は土方が落としたらしい新隊士募集の広告を拾い、スッと差し出す。
受け取ろうと手を伸ばすが、青年が広告を見ている事に気づき、その手を引っ込める。
「隊士…募集してるんですね」
「まぁな。お前、これ持ってけよ。余ってんだ」
土方がぶっきらぼうに言うと、青年は「そうですか」と言い残して去っていった。
その青年が去る際、不敵に口元を歪めた事を二人は知らない。
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