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視線を移す。捜し物はすぐに見付かった。
死体から少し離れた場所に、頭が転がっている。若い男だった。表情は暗くて読み取れない。
僕は、もう一度少女に視線を戻し――そこでようやく気付く。
少女が、こちらを見ていた。
視線が合う。綺麗な、空色の瞳。けれどその眼光は、全てを見透かすように鋭く、底が見えないくらい深く――暗い。
「…………っ!」
気が付くと、僕は駆け出していた。今来た道を、全力で戻る。遠ざかっていく異常の気配。近付いてくる日常の匂い。公園を抜けて自宅への進路を遠回りに変えるまで、僕は一度も振り返ることはなかった。
そして家へたどり着いて初めて、身体の震えに気付いたのだった。
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