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翌日。
いつも通りにいつもの事をこなし、いつも変わらない朝の教室で、僕はいつもの予習をしていた。
科目は英語。数学。現国。古典。その他全般。到底終わる量ではないそれらも、一応形だけでもやっておくのが僕の日課だった。そもそもこの未塾(みじゅく)学園は、毎回予習をこなす程の勤勉さは求められず、かと言って授業を聞き流すような惰性さは認められていない(もちろん個人差はあるけれども)。その程度のレベルなのだ。
では何故。そんな必要の無いことを毎日繰り返しているのか。それも、学校で。その理由は単に勉強しているふりをしていれば、周りの人間(クラスメート)が話し掛けにくいだろうというものだったが、進学新クラスから一週間、既に『あまり喋らない人間』として認識されつつあるので、この行為にあまり意味は無かった。
さて。あまり意味が無いと自覚したところで、思考を先日の出来事――というより一方的に目撃した光景へと移行することにする。
と言っても特段考えられる事などあるわけはなく、焦点はもっぱら、“あれ”をどのようにして捉えるかどうかだ。実を言うと、あの時の事はよく覚えていない。放課後、これまたいつも通り病院へ妹を見舞いに行き、その帰り、公園に入ってから自宅に着くまでの間がどうもはっきりしないのだ。
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