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まず絵無が思い描いたのは、『完成品』の姿だった。
人形は平等だ。見る者によって様々に表情を変え、癒しと悲哀を等しく与える。それが人形。そうでなければ人間。単純な解答。
絵無は思い立ったその日に、さっそく自らの計画を実行に移した。
最初に、古くから親交のあったとある旧家の娘を手に掛けた。今年中学に上がったばかりの子どもである。
絵無のことを実の兄のように慕っていたその少女は、最期――背後から頭を潰されて、現実を知る暇もなく生き絶えた。
横たわる少女だったものを見下ろした際も、その身体を丹念に丁寧に解体した際も、男は特に何も感じなかった。
一つ。
人間の身体には『血が流れていたこと』を、意外に思った以外は。
それから男は、人形の『部品』を一つ一つ、こつこつと集めていった。
右足。左足。左手。右手。胴体。自身の理想とするパーツを。自身の理想とする完璧な人形を目指して。そして――現在。
寂れた公園の一角である。錆びれた遊具が点在しているだけで、周囲に人気はない。足元の砂は血を吸い赤黒く変色し、完全に夜の闇に同化しつつあった。
教師という立場を利用して探しだした獲物。今までと同じく、普段から家出がちで、家に二三日戻らなかった所で騒がれないような人間――その成れの果てを前にした絵無は、大した感慨にふけることもなく、それを見下ろしていた。
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