第一章 壱・殺人遊戯

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――――  いつもの帰り道だった。繁華街から住宅街に抜ける途中にある公園。一つ離れた道沿いに大型の共同住宅と新しい公園が出来たせいで、すっかり寂れたその場所は、通り抜けると少しだけ家への近道になる。  毎回早く帰りたい用事があるわけではなかったが、そこを通って帰ることが僕の習慣になっていた。何というかそう、桜が綺麗なのだ。たぶんそんな感じ。  変に近代化が進むこの街には希少な土の地面を踏みしめ、両脇を桜に挟まれた遊歩道を行く。途中、今はもうただの水溜めと化した噴水のある広場を通り抜け、進路を南へ。公園で一番大きな桜がある遊び場に差し掛かった――はずだった。  一瞬。目を疑うと共に自分を疑う。頭を、疑う。そして現実を疑い、僕の脳はようやく視覚を受け入れた。  ――赤。  そこには僕が知らない光景が広がっていた。  無惨に破壊された遊具。破壊に次ぐ破壊を繰り返したような、まるで蹂躙。原型が無い。無惨に無残。生臭い匂いが鼻に突き刺さった。けれどそれは嗅いだことのある匂い。一瞬、視界が単色に塗り潰される。――赤。電灯に照らされる地面が赤い。水溜まりだ。水溜まりが、真っ赤だった。大雨が降ったように。地面一杯に広がる水溜まり。赤い。あかい。アカイ。  そして。  その中心には――少女が立っていた。  長い黒髪を風になびかせながら。頬を血で赤く染めて。何を着ているか分からないくらい全身が真っ赤で。直立不動。威風堂々。だらりと下げられた両の手の先には、赤色に光るナイフが二本。ぽたぽたと。何かが滴(したた)り落ちている。
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