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結城は店の脇に停めたバイクに跨がり、すぐさまアクセルを引いた。
向かった先は新宿だ。
まだ少し肌寒さが残る春の風を感じながらしばらく走ると、やがて巨大なビルがいくつも見え始める。
現在の都心部では新しいビルは全て高層でそれぞれの建物が隣接しており、正に〝超高層ビル群〟という言葉がよく似合う。
しかし、そんな景色も結城の目には高さを競い合うかのように積み上げられた、コンクリートとガラスの寄せ集めにしか見えない。
その中にある一際高いビルの前でバイクを停めると、ヘルメットを外し辺りを見渡した。
「何度来てもこのごちゃごちゃした景色は、あまり好きになれないな」
文句を言いながらもバイクから降りて、入り口へと向かう。
独り言が多いのは、彼の悪い癖だ。
下からその建物を見上げると、一体何処まで続くのだろうか。
遥か上までそびえ立ち、太陽の光が窓に反射して白い雲が映し出されている。
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