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結城は少し眩しそうに目を細めてから、ゆっくりとビルの中へ入って行った。
自動ドアを抜けると無駄に広いホールが視界に飛び込み、四隅には大きな柱が立っている。
靴音を響かせながらそのまま真っ直ぐ進み、奥に設置されたエレベーターのボタンを押した。
二基あるエレベーターのうち、先に扉が開かれたのは左側だ。
気圧の変化を感じながらも、瞬く間に運ばれた地上三十階でエレベーターを降りる。
すると、今度は重々しい鉄の扉が現れた。
扉に設置されたオートロックを解除するため、結城は右手の人差し指で手際良く番号を打ち込んでいく。
八桁の番号が認証されたのだろう。
独特な機械音と共に扉が開いた。
「遅ぇよ。待ちくたびれたぜ!」
扉が開くと同時に学生服を着て腕組みをした少年が、結城に向かって怒鳴った。
「待ちくたびれたって直人。お前学校は?」
「そんなもん、サボったに決まってんだろ。久々の獲物が見付かったってのに、退屈な授業なんか受けていられねぇよ」
黒髪を無造作に立て、眼鏡をかけた少年……堺直人(サカイ ナオト)は結城の質問に自慢気に答える。
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