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「ったく、しょうがない奴だな……。美幸(ミユキ)は?」
「奥の部屋で待ってる。早く行こうぜ」
そう言うと直人は背を向けてポケットに両手を突っ込み、革靴の踵をずりながら奥の部屋へ向かった。
結城はそんな彼の背中を見ながら苦笑を浮かべるのと同時に、どこか懐かしさを感じていた。
まるで昔の自分を見ているような、そんな気がしてならなかったのだ。
直人がドアをノックすると、ストレートな黒髪が印象的で細身な女性が姿を見せた。
彼の姉である、美幸が二人を出迎えたのだ。
「久しぶりね、結城さん。私達も、伸一からデータはもらっているわ」
部屋に入ると大人一人が横になってもまだ余るような大きめの茶色いソファーと、窓際に置かれた机の上にノートパソコンが二台あり、まだ新しさの残る白を基調とした壁に囲まれた空間が広がっていた。
「元気そうでよかった。今回もよろしく頼む」
そう告げた結城に向かって、美幸が優しく微笑む。
その傍らで、直人は不愉快そうにパソコンに向かった。
この姉弟は"獲物"と呼ばれる犯罪者の居場所を突き止め、結城に情報を提供している凄腕のハッカーだ。
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