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殺人犯が灰と化すまで、一分とかからなかった。
現実とは思えない光景だが、青年にとってはこれが何の変鉄もない日常なのだ。
それから程無くして木製のドアが静かに開かれ、ベレッタを握り締めた結城が姿を現す。
「少し、遅かったね」
入口から最も離れた窓に寄りかかりながら、青年はニッコリと微笑んで結城に話し掛けた。
右手には、牧野が奪った現金の入ったケースを持っている。
部屋の中に充満した血の臭いと、資料と全く異なる存在に戸惑いながらも、結城は口を開いた。
「牧野は、どこだ?」
「彼は死んだよ。正確には、俺が殺したんだけどね」
青年は顔色一つ変えずにそう答えると、結城に向かって一歩ずつ足音を響かせながら近寄り始めた。
「動くな! お前が殺したのなら、死体はどこへやった!?」
「もう燃やしてしまったよ。って言っても信じないでしょ? そんなことより、あなたが今手に持っているそれ。物騒なモノはしまってくれないかな? 俺はあなたの敵じゃない」
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