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悲痛な叫び声に追い打ちをかけるように、紅蓮の炎が男を包む。
徐々に炎の勢いは増していき、骨や肉・衣類は焦げ何とも表現し難い異臭が鼻を刺した。
少年は込み上げる吐き気を必死に堪える。
やがて、殺人鬼だけを燃やし尽くした炎は消え、その場には暗赤色のシミだけが残されていた。
「こんな時間に、どうしたの? 子供が夜に出歩くなんて自殺行為だよ」
突然背後から届いたその声に、少年が恐る恐る振り返る。
一体どこから現れたのだろうか。
灰色の壁にもたれ掛かるように、喪服姿の青年が立っていた。
金色に染めた髪。
やや高めの背丈。
とても整った顔。
男とは思えない程美しいその青年は、ゆっくりと少年に近付く。
「大丈夫か?」
「……来るな!」
今しがた命の危機にさらされた少年は、警戒心を解くことができずに数歩後ずさった。
「そんなに怯えなくて良い。君を殺すつもりなら、とっくにそうしているよ」
そう言って苦笑を浮かべた彼は天使か、それとも悪魔か?
死の街と化した東京に、突如その青年は現れた。
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