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しばらくして身支度を整えると軽い足取りで階段を降り、建物の横に置かれたバイクへと急ぐ。
フルフェイスのヘルメットを被りバイクに股がった瞬間、向こうから歩いてくる人影が見えた。
どうやら男のようだが、逆光でよく見えない為目を凝らす。
────あれは……?
その人影が近付くにつれて、金髪の青年だと気付いた。
「どっか行くの?」
ジーンズに黒い厚めのパーカー姿の朱雀は、パーカーのポケットに両手を入れて歩きながら結城に尋ねた。
「まあな。バイクで海でも見に行こうと思ってな」
「海か。なら俺も連れて行ってくれない?」
「えっ?」
「予備のヘルメット無いの?」
「……あるよ。ほら」
まるで少年のように輝いた瞳を向ける朱雀に戸惑いながらも、結城はそれを受け入れた。
この日はそこまで強い風も吹かず、暖かな陽射しがとても心地良い。
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