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朱雀が後ろに乗ったのを確認すると、結城はバイクを走らせた。
巨大なビルが立ち並ぶ都会を喧しいエンジン音と共に一気に駆け抜ける。
やがて、高速道路に乗り込むとバイクのスピードは更に増していった。
おそらく車で向かうより、時間はかからないだろう。
このよみは見事に当たった。
一般道に下りてから、徐々に海に近付くと独特な潮の香りと肌にまとわりつく空気を感じる。
それから程無くしてある海岸に辿り着くと、バイクを停めて二人は海へと歩き始めた。
砂浜は歩き辛いが、打ち寄せる波の音が耳に届くと不思議と悪い気はしなかった。
「海、好きなのか?」
結城は後ろを振り返ると朱雀に少し大きめの声で尋ねる。
「昔、兄さんと二人でよく遊びに来たんだ……」
「そうか」
「ところで答えは出たのかな?」
兄との思い出を告げた朱雀が一瞬、寂しげな表情を見せたかに見えたが、すぐにいつもの微笑みに戻る。
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