二つの顔を持つ男

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「マスター。早速だけど、これが今回の獲物だ……」 先程とは打って変わって真剣な表情をした伸一は、カウンターの上に一枚の写真を置いた。 そして、下の方だけやけに厚みのあるA3の茶封筒を写真の隣に並べる。 「封筒には依頼人から預かった報酬の一部と獲物に関するデータが入ってる。全く、警察は宛になら無いからってうちのケツモチのヤクザに殺しを依頼して来るなんて、この国も本当に終わってるよな」 皮肉混じりにそう言うと、コーヒーカップを大きく傾けて一気に飲み干し、伸一は千円札を一枚置いて席を立つ。 「じゃあ、頼んだぜ」 そう言って彼は背中を向けたまま右手を振り、店から出て行ってしまった。
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