雨宮朔真

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熱拳が朔真の顔面へと放たれようとしたその時。 ドカン!、と教室の『スライドドアが室内に入ってきた』。 入ってきたスライドドアはそのまま重力に従事し倒れる。 廊下を伝い、一階全部に響き渡るような音により雅熾は熱拳を止め、振り返った。 自然とその場にいた生徒の視線はスライドドアがあった場所に集まる。 集まった先には、二人の少女がいた。 二人の容姿はそっくり、いや、同じと表現すべきだ。 身長、体型、髪型、恐らくは体重まで一緒だろう。 小柄な細身の体型をし、起伏とは無縁の体つき。 腰まである漆黒の麗しい髪をツインテールにしていた。 幼気を象ったような顔付きで、無邪気を表現しているかのような表情。 一人は右足を、もう一人は左足を上げているところを考えるに、この二人がスライドドアを廊下から蹴飛ばしたのだろう。 少女二人は足を下げると教室内を見渡す。 「あ」 と、光司が軽く驚く。 「誰だ? あの二人」 腕に帯びていた熱をすっと消し、雅熾が首を傾げる。 朔真は雅熾の体で見えないため、床に座ったまま体を横に動かした。 そして、 「げ」 朔真と二人の少女の目が合った。  
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