雨宮朔真

2/60
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
四月八日の午前八時。 北帝学園の一年生の教室で、一人の少年がうなだれていた。 春の朗らかな天気に似つかわしくない光景で、うなだれている少年、雨宮朔真は「もうだめだ俺は死ぬんだ殺されるんだ破滅されるんだ」と、呪詛のように呟きながら机に突っ伏していた。 そんな負の塊となっている朔真とは対照的に、学園内は普段より談笑に満ちていた。 無理もなく、今日、この国立北帝華学園では始業式と入学式がある。 始業式も春の始業式。 つまりは、学年が上がり、クラス替えがある。 心境に何らかの変化が生じるには十分なイベントだろう。 しかし、そんなイベントに興味がないだけならともかく、朔真は今日という日が来たことで、余命三ヶ月宣告されたかのように沈んでいた。 お陰で、彼の周りには“壁”があるようで、朔真の周囲には誰もいなかった。  
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!