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言葉にし、認めるのが嫌なのだろう。
出来ればただの勘違い、
悪い冗談、
悪夢、
虚構であって欲しい。
つまり、ただの逃避願望だ。
しかし、現実は離れない。
朔真にしがみつき、離れることはない。
朔真はそれを十分理解している。
そのため、朔真の表情は段々と煩悶を浮かべ、徐々に苦悶に歪み、遂にはああーっと頭を抱えた。
「見ていて面白かったよ」
ニッコリと笑顔を浮かべながら光司は感想を端的に述べた。
「そりゃ、どうも」
「賞金貰えるかなぁ」
「どこに送る気だ!? てか、撮ってたのか、この野郎!」
光司の台詞に、朔真は噛みつくような反応をした。
見れば、光司はしっかりと携帯を朔真に向けている。
「安心してくれ。ちゃんとムービーだし、協力者として三割は払うよ」
「そんな心配してねぇ! それに協力者じゃなくて当事者だ!」
「YouTubeで流せばCMのオファーが来たりして」
「やめろ! 俺が世界に意味不明な恥を発信するだけだ! それに今の画で何のCMに使われるんだよ!」
「タイトルを付けるなら、“俺の頭皮の運命は!?”って感じかな」
「全然禿げてねぇよ! 生まれて十五年、そんな悩み持ったことすらないわ!」
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