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気が済むまで
歌った。
道行く人が立ち止まり
聞いてくれ終わるころには
人だかりが出来ていた。
「ありがとうございました!!」
拍手を背にその場を
後にした。
「すごいですね…太一先輩。」
ヴォルビックを
買いに自販機に
向かってる途中
聞き覚えがある声に
歩みを止めた。
「なんだ由紀ちゃんか
ありがとう。けどここ最近だよ?ああいう風になってきたの」
「そうなんですか?」
「あぁ。最初のころなんて立ち止まってもくれなかった。声がちっちゃいのもあったんだろうけど。」
「へぇ……」
「けどね、俺は
あるキッカケの
おかげでここまで
来られた。
人間、キッカケが
あったらどうにでも
なるもんだよ。」
「先輩、悩み聞いてもらえませんか?」
「あぁ、いいよ」
「千春ちゃん達みんな
中学から音楽をやって
きた経験者なんですよ」
「そうなんだ。」
「けど私、音楽未経験なんですよ…だからやってけるかなぁって」
結構真剣に悩んでいた
であろうその顔は
今にも泣きそうだった。
何故だか少し
愛おしさを感じた。
「そういうことか、
簡単だよ。」
「どうしたらいいですか?」
「その人より数倍練習すればいいんだよ。
古くさい考えだけど
俺も高校入るまでは
音楽したことなくて
けど歌いたいって
気持ちだけで
軽音に入った。
俺の年代は今いる
2人、桜井と俺だけ
だったんだけど
桜井は小学生から
ベースやってる
らしくて。
最初の方は
由紀ちゃんと
同じ考えだった」
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