6章

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――高校に進んでからも、調べに調べた。 金曜の放課後は学校の図書館でアルファ=ケンタウリに費やすと決めたので、もはや人には「金曜の図書館鬼」と呼ばれるくらいだ。 まず、何も知らない頃は白い写真が不愉快なばかりだったけど、実はアルファ=ケンタウリは光り輝く恒星なのだ。 写真が真っ白でもおかしくはない。 でも、小馬鹿にされたようでむかつく。 もちろん辞書は調べたし、天文学の本も学生向けのわかりやすいものから漁った。 アルファ=ケンタウリが出てくる、突拍子も無いSF小説だって何冊も読んだ。 そうやって、調べるうちに、手紙をやりとりするうちに、なんだか湧いてくるあの星への愛着。 ただの真っ白な写真の群れに、わたしと彼の間にあるアルファ=ケンタウリの姿がありありと浮かんで見える。 粘性の湖の中にたゆたうという、彼の住んでいた文化住宅が。
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