3章

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――もう、文通するしかない! そう、思った。 今日は一晩かけて、文面を練ってやろう。 あたたかいベッドから抜け出し、コーヒーを淹れて勉強机にセットして、窓の外にあまねく瞬く星に誓う。 そうして書き上げた入魂のハガキ一枚。 「偽名でしょ? 失礼です。本名を教えてくれたら文通してあげてもいいから。」 我ながら冴えていると思う。 早朝の太陽に照らされた簡潔な文章が、光をいっぱいに受けて眩しい。 わたしは、宇宙人を自称する馬鹿に興味があるのであって、いやしない宇宙人はどうでもいいのだ。 当て付けにこっちの住所は彼と同じ郵便局留めに指定してやった。 名前だって偽名を使う。 完璧に書けていることを確認すると、会社へ出勤する父さんに投函を頼む。 「なにやってんのかと思えば、お前も馬鹿だねえ」人のハガキを覗き見た上に失笑気味でニヤニヤされたのだが、気にしない。
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