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どんよりとした気持ちで進む通学路は、いつもより短く感じる。 いやいや……そういう時は長く感じるだろうって? それは状況次第なのさ。 徒歩圏内にある高校に通う私は、どんなにダラダラ歩いても二十分もすれば学校に着いてしまう。 いつもならその距離すら長く感じて、歩くのは面倒だし、もし私がどこぞのお嬢様だったら車で送迎とかだろうに……なんて思ったりするのに、あと数メートルで校門という今、重い足取りはついに止まって回れ右したい衝動にかられた。 ──やっぱり帰る! 今にも泣きそうな気持ちと嫌な音をたてる心臓に負けて、踵を返そうとした瞬間、 「おっはよっ。天音」 「っ!」 声と共に叩かれた肩。 大袈裟じゃなく飛び上がって驚いた私が反射的に声の主へと目をやると、そこにはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる女の子がいた。 「お、おはよ」 彼女は私のクラスメートで、はっきり言って今一番会いたくなかった人物だったりする。 それは、私の足取りが重い理由であり、この前カルマに間違って告白してしまった原因だったりが、彼女派生だからなんだけど、 「やだぁ。何か天音元気なくない? 今日の文化祭、彼氏来るんでしょ? もっと嬉しそうにしなよぉ」 「……」 ニヤニヤと意地悪く笑う彼女は凄く楽しそうで、ムカムカと怒りが湧いてくる。
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