二、歓迎祭

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「お!? すごい力持ち! うんうんいいよ、益々逸材だよ。体力はモデルさんには欠かせないもん。三日位なら徹夜してもらって大丈夫そうかな大丈夫だよね? ようし決定! 去年作った服でファッションショー&撮影会やっちゃおー!!!」 鼻歌唄って楽しそうに笑う藍。瞳孔が開いてなきゃ微笑ましくも見えたかもな。 ぐ、ぐぐぐ、と。吸血鬼の怪力で持ち上げられている藍の両腕が、着実にエリシアの服の胸元へと近付いていく。 「う……嘘、え!? タ、タツシこいつ私より力強いわよ!!?」 「そうみてえだな」 「そうみたい、じゃなくてっ……! た、助けなさい」 見間違いだろうが向けられた目が若干潤んでた。 愉快過ぎて思わず笑っちまいながら首を横に振って、一足先に玄関に入った。 「大丈夫だから! 怖くないから! 痛くしないからあ!!」 「キャアアーーーーーーー!!」 閉じたドアの向こうから届く断末魔に噴き出してから、靴も脱がないで廊下に倒れ込んだ。 疲れた。全身隈無く疲労塗れ。当然だ今夜は色々有り過ぎた。 だからといって無防備に倒れるのは、やはりここが、安心できる場所だからなんだろう。 すっかり状況は変わっちまったが、我が家は、変わらず我が家だ。 ……ああ、不本意だがな。儀礼としてこれだけは言っといてやるよ。エリシア。 「ようこそ。比良井家へ」
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