三、不可能避

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有る事無い事足し算引き算して都合付けた言い訳は、案じた以上に苦しかった。しかしまあ、こう簡素なら逆に突っつき所も少ないんじゃねえかなあ。 おもいっきり思考停止しつつきつね色のトーストをつまみ上げる。バターまで手が届かないのは背中に貼り付いてる幼女が俺に身動きを許さないため。 「ゴホン、あーー……それにしても宿無しか。来日中に滞在してたアパートを追い出されちゃったんですって? 大変だったわねえ、エリシアちゃん」 「………………」 わざとらしく咳払いして、藍が猫なで声で語りかけるが無反応。 冬の間もっぱら比良井家の食事の場となっている丸炬燵に、いつも通り脚を突っ込んで温い思いをしている俺と藍だったが、エリシアは断固として俺の背後から動こうとしない。 「エ、エリシアちゃん? さっきはその、ごめんねー? お姉さんちょーっとばかし取り乱しちゃって。エへ」 「…………」 「も……もうしないから大丈夫だよ? ほぉら怖くない怖くない」 「……………………」 警戒しまくっていた。強姦未遂に遭ったのだからこれは仕方ない。つか、強姦魔の言ってる事が犯行当時と大して変わっていない。 そしてさっきから言いたかったんだがエリシア、この女の前では俺なんざ新聞紙程の障害にしかならねえからな。 .image=450000370.jpg
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