三、不可能避

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「助けてたつっちん!」 「何を?」 「私もエリシアちゃんとくっつき合ってキャッキャウフフしたいのであります」 「もう手遅れだテメェは」 現在進行形で色々と。 ……さて。 気は進まないが話しも進まないんで俺が代わりに話を務付けよう。 「で……事情はわかったよな? コイツはすっかり無一文、着の身着のままで日本には頼れる宛もねえそうだ。ウチで引き取れりゃあそれが一番だと、俺は思ってんだが」 「え……?」 はたと食事の手を止めて、藍が俺の面を窺う。 うん?俺まともじゃない事何か口走ったか? 少女愛好家のこいつの事だから二つ返事で請け負うもんだと。 「あー……反対か?」 「ああ、ううん、……賛成に決まってんじゃないのさ? あと十人美少女連れて来たって金銭的には余裕よん」 「部屋数考えろ」 廊下で雑魚寝させる気か。 新聞の勧誘かなんか来た時点で人生終わるぞ、その光景。 「えっへへ、エリシアちゃん、服なら一杯あるからね。あとで好きなのどれでも選んでいいよ?」 デレッデレの態度で、懲りずにエリシアを懐柔しようとする藍。 ノリノリじゃねえか。焦らせやがる……一瞬間が開いたから、突き返されるかと思った。 そうなったら、エリシアには悪いがこの家には居られなくなってた所だ。 ハナから決めていた事。藍の第一声が明確な拒絶なら、たとえそこから意見が一転しようともエリシアは追い出す腹だった。今回ばかりは交渉する気からして更々無い。 家族に、嫌がられてまで。それを口先で抑えつけてまで。まかり通すような案件じゃない。断じてない。 ま、そん時は俺も道連れで路頭に迷うんだろうが。
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