三、不可能避

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「嘘? なんの濡れ衣だ」 咄嗟にとぼけてみた。 苦し過ぎる。 まあ当然といえばそうなんだが………………冗談抜きで、勘繰られてんぞこれ。 「交通事故、だったんでしょ? エリシアちゃんの身代わりになって、怪我したんだよね。ねえ、傷、どこ?」 「ツバ付けて治した」 「あの娘が着てたたつっちんの上着、ひっ剥がして確認したよ。ゴミ箱に捨ててあったシャツとパーカーもね。黒だからわからないと思った? 血が染みこんでたよ。量は死ぬ程ではなかったみたいだけど」 「まーこうしてピンピンしてんだから当然だろ」 「死ぬ程じゃない、でもだから、とっても不気味な血のりの量。蛇口じゃないんだよ人間の身体は。血流して簡単にハイ打ち止めなんて訳いかないよ。あれだけ派手に出血しておいて体に何の支障もきたさずに済む、なんて絶妙な血の流し方、普通できないと思う」 「不思議な事も……あるもんだ」 昨晩。首筋に食い込んだエリシアの牙が引き抜かれた瞬間の、生々しい感触が頭に浮かんだ。      ・・ 「他にもね裁四。エリシアちゃんってさ?」 呼び名が、「裁四」に。 まともに取り合わない俺へ、あくまで自分は真面目だと藍なりに告げた。
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