三、不可能避

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過大評価。 それ以外の何物でもない。 そんな大それた事、この俺程度の力が及ぶはずもない。 「裁四がそうやって嘘にもならないような出鱈目を言うのはさ、私の身を案じての事なんだっつうのは。うん、わかるよ?」 「…………」 ……が、しかし。 それにしても、である。 「あえて異変を明るみに出して、あからさま過ぎる嘘を重ねるのはさ…………"何が有るか"は秘密だけど、"何かが有る"のは伝えておくって意味でしょ? 暗に警告した上で、これ以上踏み入って来るなって言いたいんでしょ?」 正解。 それにしても。  ・・・・・ (やりにくい) 心の乱れが目に出たか。藍が眉間を歪ませる。 「……わかったからもうやめよ? 今ならまだお姉ちゃん怒ってないから。そんなのけ者にするような態度は悲しいよお」 一転笑う藍。          ・・・ 経験上、この笑顔はマズイ。 無茶は常に言えども、怒りが振り切れる事は滅多に無いコイツがぶち切れる直前の兆候だ。 「おつかいに行った先で本当は裁四に"何が有ったか"――お姉ちゃんに教えて?」 逆らわないのが賢明。 俺は一もニも無しにこう答えた。 「さっきから、何の事やらさっぱり話が見えねえ」 「――――――」 首元の拘束が、一気に、絞り上げられる。
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