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それ以上の変化はしかし予想に反して起こらない。
蹴られも殴られも投げられもしなかった。
藍はただ。
静かに、静かに、怒っていた。
・・・
「そこまでか。それ程なのか。私を本気で怒らせてでもまだ騙る気なのか。私の事を―――――――――守る気なのか」
「……な、にを」
何を、言ってやがる。
当たり前だろそんなの。
泣きそうな顔、すんじゃねえよ。
お前は俺の
「……私はあんたの姉ちゃんだ」
不意に、藍の腕の力が緩んで、俺は床に足を着けた。
と思ったら抱き締められた。
「『もしも』あんたが今、とんでもない事態に巻き込まれてて……『仮に』理不尽な要求にも潔く応じるしかない、差し迫った状況に立たされてたとして……『万が一』、今じゃないいつかこの先訪れるタイミングで一連の元凶を取り除くために、ひとまず穏便に従順にしているんだとしたなら……」
…………おいおい。
概ね、お見通しかよ。
別に隠す必要も追及される意味も、無かったじゃねえか。
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