三、不可能避

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――――――――――― 布団を敷いた部屋を一旦後にした俺は、エリシアを呼びつけようと階段に向かった。狭い家だからドアくぐってすぐそこだがな。 階段の手すりに手を着き、一階を見下ろす。 居ないな。階下にあの目立つ金髪は見受けられない。居間まで引っ込んだか? 面倒くせえ。玄関先で倒れるくらい疲れきってんだよこっちは。 ほっといて自分の部屋で寝てやろうかとも思ったが、本気でそうしたかったが、後々やってくる面倒なツケを想像すれば押し寄せる睡眠欲求も引けていった。 仕方なく階段を下りる。 下りきってから見回してもやはり影はなし。さらに進んで、開きっぱなしになっていた引き戸から居間を覗きこんだ。居た。 こっちに背中を向けて床に座るエリシア。 テーブルに肘を置いて、トーストが乗ってる皿に顔を近付けてる。 何してんだかスンスン音立ててトーストの匂いを嗅いだり指でつついたり。 やってきた俺に気付かないほど熱中してるかと思えば、時折ハッと思い直したように背筋を伸ばして頭を左右に何度も振る。 しばらく卓上から顔を背けて……また近付いていく。以下繰り返し。 「何してんのお前?」 「ひゃあ!?」 かん高い悲鳴を上げて振り向くエリシア。
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