三、不可能避

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何かに酔いしれたようなエリシアの声が届く。 続いてもぞもぞと身じろぎする気配。肩に置かれる手。 首筋に吐息。 「ってオイ待てテメエ」 目線をどっかやってたから反応が遅れた。 接近していたエリシアの頭を、片手でわし掴みにする俺。 首の角度をぐいぐいっと変えさせて、強制的に目を合わす。 「やん」 やん、じゃねえ可愛い子ぶんな。 「ちょっとタツシ、いきなり何をするのよ」 「いきなり何すんだはテメエの方だ何しようとしてやがった」 「私はただタツシの血を吸おうとしてただけじゃない」 「だけ、で済ますのかそれを」 会話の真っ最中に幼女に襲われるとか。出来事としちゃ相当ショッキングな部類に入るかんな多分。 つか、まず、ねえよ。 「私は今とってもお腹が空いているのよ」 「そうか、そうか。わかった」 まんまるい額から手を離し、エリシアをその場に放置して食器棚に近付く。 下段の引き出し。でかいし深さが有る。そこは菓子類の保管場所だ。 ぎっしり詰まった中身に手を突っ込んで引き抜くと出てきたのはカロリーメイトだった。チョコレート味。 比良井家はチョコレート味しか買わない。 「ほらよ」
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