117人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
カロリーメイトを胸の前で両手キャッチしたエリシア。
キョトンと呆けた顔をして、俺と黄色い紙箱に交互に視線を送る。
だが会話の流れくらいは読めるみてーだな、それが食べ物であるとすぐに理解を示し、こう言った。
「こんなもの口に合わないわよ……」
こんなもの呼ばわりだった。
頬を膨らませ口を尖らせ眉をひそめ、顔面のパーツというパーツ総動員でバランス栄養食に対する不満を表現しているエリシア。いやどんだけ不満なんだ。不細工になってねえのが余計に腹立たしいわ。
俺は棚に向き直って中身を吟味し直す。何なら気に入るんだかこのお嬢様は。
「…………吸われるのがそんなに嫌かしら」
エリシアがテーブルの向こうから俺の背中に問いを投げかけた。
「言ったろが。できれば二度とゴメンだって」
「本当に、何から何までタツシは扱いづらいんだから、まったく。普通ならこんな手間は要らないはずなのに」
「どういう意味だ?」
「言ったじゃない。吸血行為は人間にとって快感なのよ。味わったら忘れられないような、とびっきりの」
「その言い草だとほとんど麻薬だな」
「麻薬よ。例えじゃなくて形而下に物質として存在する、麻薬。ここにね、ふぉあ」
謎の発音をいぶかしんで背後のエリシアをチラ見すると、口のはじを指で引っ張って鋭い牙を露出させていた。
"ほら"ってか。
最初のコメントを投稿しよう!