三、不可能避

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カロリーメイトを胸の前で両手キャッチしたエリシア。 キョトンと呆けた顔をして、俺と黄色い紙箱に交互に視線を送る。 だが会話の流れくらいは読めるみてーだな、それが食べ物であるとすぐに理解を示し、こう言った。 「こんなもの口に合わないわよ……」 こんなもの呼ばわりだった。 頬を膨らませ口を尖らせ眉をひそめ、顔面のパーツというパーツ総動員でバランス栄養食に対する不満を表現しているエリシア。いやどんだけ不満なんだ。不細工になってねえのが余計に腹立たしいわ。 俺は棚に向き直って中身を吟味し直す。何なら気に入るんだかこのお嬢様は。 「…………吸われるのがそんなに嫌かしら」 エリシアがテーブルの向こうから俺の背中に問いを投げかけた。 「言ったろが。できれば二度とゴメンだって」 「本当に、何から何までタツシは扱いづらいんだから、まったく。普通ならこんな手間は要らないはずなのに」 「どういう意味だ?」 「言ったじゃない。吸血行為は人間にとって快感なのよ。味わったら忘れられないような、とびっきりの」 「その言い草だとほとんど麻薬だな」 「麻薬よ。例えじゃなくて形而下に物質として存在する、麻薬。ここにね、ふぉあ」 謎の発音をいぶかしんで背後のエリシアをチラ見すると、口のはじを指で引っ張って鋭い牙を露出させていた。 "ほら"ってか。
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