二、歓迎祭

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エリシアを背負って歩道を行く。思ったより苦でもない。と、言うよりゃ、軽すぎて担いでる気にならない。 見た目の小ささから想像したのを上回って軽い。旅行用のでかいリュックサックに土産袋でもさげたらだいたいこんなもんじゃねえか。 体勢を保つために掴んでる太股も肉は付いちゃいるが、多分俺のふくらはぎより細え。よくわからんとこでまたコイツの人外ぶりを実感していた。 それともこんなもんなんかね。この位の歳のガキってのは。 「結構結構。タツシの背中は中々快適よ。肩の高さがちょうど顎を乗せやすい」 「あんまひっつくんじゃねえよ。髪の毛が邪魔くせえ」 ただでさえ首筋は苦手なのに加えて、今はいつ何時噛みつかれるかわからなくて気が気じゃねえ。 絹糸みてえな細かい金髪が首に触れるたび、背筋に震えが走る。 「ふふ。美しい髪でしょう?」 「いや邪魔だっつったろ」 「金色の御髪は吸血鬼の中でも特に歴史のある家系にしか産まれないの」 「……俺の話を」 「他にも真紅の瞳。そして真紅の爪。古の"始祖"に近い、最も吸血鬼らしい姿だと云われているわ」 「聞くつもりはねえんだなそうかそうか。尻から地面に落としてやろうか」 「あら嫌だわ。かじりついてでも抵抗しないと」 脅し文句ならちゃんと聞き入れてくれるようだ。うっとりした声でさらりと脅迫し返したエリシアが、俺の頭の両脇から勢いよく腕を突き出した。ご自慢の真っ赤な爪を見せびらかしたいのか、ひらひらさせている。 ほんっと自由なお前。 せめてもの報いとして大袈裟に背負い直した。肩の上に乗っていた顎がバウンドし、「あうっ」と声がして腕は引っ込んだ。image=421814187.jpg
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