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「そうよ。お前は規格外」
耳元から浴びせられた、吐息混じりの甘だるい声。
……またか。音もなく、近寄って。肩にかかる細い指。さっきと同じ展開。
「気配っつうもんがねえのか」
…………ああ、無いんだろうな。なんて、問いかけつつ勝手に納得してしまった。
思えばコイツに無遠慮に近寄られるのもさっきが初めてじゃない。
月夜。出会い頭に籠絡された、昨晩の記憶を、思い出しながら、
それは唐突に。
「あ、む」
寸分違わぬ感触を、首筋に覚える。
「ーーーーーーな」
声が漏れたその間にも感触は襲う。
容赦なく。
鉱物のように冷たく、酷く鋭利な異物感。
脈々と伝い滴る体温。
咄嗟に肩の手を振り払うーーーー払えない。
つい先刻容易く制止できたのが嘘のよう。
棚の食器を雪崩れ落として威嚇するーーーーもはや肩すら上がらない。
脱力しきっている。
(マジ、か、コイツーー)
・・ ・・・・
吸血、している。
「ハア、ハア、 ハ、あう、ハむ あ、フ、んぅぅ、チュ
ふ ぅア、アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
正気とは思えない。
脈絡もなく豹変する様は狂気ゆえ。
測り違えた?
吸血鬼の食欲。生かさず殺さず愛でるという言葉。
ふざけるな。この量、この頻度、一夜だって越えられない。
油断?
違うだろ。そうじゃねえだろう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コイツがその気になった時点で抗えない。これが二度目だというのに、またも抗う術なんざないままにーーーーーー
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