三、不可能避

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「アハッ! アハハハ裁四? ねえ知ってる? ンン、吸血の悦を知った人間の最期を、あなたは知っているかしら?」 脇の下を通して背後から俺の身体を抱くエリシア。胸元に這わせてくる両手が時折爪を立てて縮む。 支えられなければ倒れこんでしまう俺の上体になお全体重を預けすがり付き、懸命に肌を擦り寄せる。 もっともっとたくさん欲しいと。恍惚の最中にありながら飽きもせず。より深くまで満たされたがっているのに。 それがどうしたら叶うのかわからなくて喘いでいる。 気持ち悪い。 ああ俺が感じたのはやはりそれ。 何もかも、何から何まで底抜けに醜くて吐き気がする。 「吸血は至上の悦楽。自我さえ消し飛ぶ究極の堕落。それは生物として決して許されないーーーーーー同時に決して抗えないパラドクス」 そうしてまた一噛み。 えげつのない音に入り混じって、あの不快感が内側を駆け巡る。脳髄が焼ける錯覚。 脳細胞一つ一つが圧搾され中身をぶち撒けている。 枯れ果てた荒野に火を放つような、無為で無慈悲な、それは倒錯した行為だ。 そんな物を求められても困る。無理だ。無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ。無理なんだ。 殺されたって俺の心はそれを抱けない。 もう、二度と。 意識が途絶える。鼓膜を揺らす音は音でしかない。終わる。 俺が、終わっていく。
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