二、歓迎祭

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「お前は俺と、俺の家族を、他の吸血鬼に関わる厄介事から守りきる」 「ええ」 「どんな相手であっても。どんな犠牲を払おうと。俺達の確実な安全を保証する」 「わかっているわ」 二つ返事で応じるエリシア。これは自信の表れに他ならないんだろう。 廃工場では逃げおおせた吸血鬼、マドルカス。アイツが何をしてこようと自分に敗北はない。 そう確信している。 頼もしいこった。 「でもね……その代わり」 「?」 「その間は四六時中片時も暇なくお前の隣に私が居るのを覚悟しなさい」 「……なんだ、そりゃあ」 気持ち悪ぃなー。 何かが困るとか以前の話しでよ。想像してみろっての。 ……気持ち悪ぃなあ。 「なんだ、だなんて、聞くまでもないでしょう? 当然お前を間近で見続ける為だわ」 「尚更わかんねえよ」 殊更きめえ。 「死にたがり」 一言、奇妙な一瞬の間を置いてそう言い放ったエリシア。 「死ぬ訳にはいかないと宣言しておきながら。……吸血鬼を相手に、あろう事か言葉の通り生き延びてみせながら。――――――死んでしまいたいと。お前は笑った。凄惨に。凄絶に」 「………………」 ふと、自分の頬に手を伸ばした。 吊り上がっちゃいない。 至極つまらなそうな、締まらない表情を浮かべてるんだろう。
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