二、歓迎祭

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「っと。そら、もうちょいで到着だ。ちゃんと羽根は隠しといてるな?」 「隠すも何も、羽根が無い状態が普通なの。飛ぶ時だけよ。かさ張るじゃないの」 「そうかい。てっきりあのバカでけー羽根にも由々しい謂われが有るんじゃねえかと思ったんだが」 「あら、いい着眼じゃない。有るわよ勿論。吸血鬼の体重を舞い上がらせるには、ただ羽根ってだけじゃあ――――」 有るわよ勿論。から先に延々と続いた自慢話しには耳を傾けずひたすら歩いて、ようやく比良井家の門前まで辿り着いた。 縦に長い手狭な敷地を目一杯使って木造の家屋が建っている。居間とキッチンとトイレと風呂で一階が埋まり、二階には部屋が三つ。車庫なし。庭なし。とにかくボロくて、冬は寒く、夏は暑い。 六年過ごしてきた、我が家だ。
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