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僕を見ていた石美様と視線が絡む。
僕みたいな一般人とは違い整った石美様の顔に、頬に熱が集まるのがわかった。
僕ひょっとしたら凄く顔が赤くなってるかもしれない。
「菖蒲君、君がこの仕事に生き甲斐を感じているのは知ってるよ。だけどね、頼みがあるんだ」
「はい、何ですか?」
「僕の夜明けの珈琲を作ってくれないかな?」
え。
何このプロポーズ。
「僕の秘書になってほしいんだ。週に何度かはこの店を手伝ってくれて構わない。だから、今日は彼を呼んだんだけどね。……近いうちに返事を聞きに来るから、ゆっくり考えておいてくれ」
ポンと僕の肩を叩いて、席を立つ石美様。
一口も口をつけられていない珈琲は、静かに湯気を立ち上らせているだけ。
伝票は持っていったようだから、代金は払うようだ。
「石美様!!」
慌てて後を追い珈琲について問うと、飲んでくれとの指示が。
え、マジで?
あんまりいい印象ではなかったけれど、まだテーブルの近くに佇んでいる秘書頭さんに頼んでみようか。
テーブル近くに引き返すと、秘書頭さんは深い溜め息を吐いた。
「主が急に申し訳ないね」
「え、と……」
いきなり声をかけられて吃驚したけれど、その声の固さにことさら驚いた。
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